虫が湧きにくく、室内でも清潔に植物を楽しめるハイドカルチャー。
室内でも清潔さを保てる点は大きなメリットですが、「ハイドロカルチャーだと植物がかわいそう」という意見が多いのもまた事実です。
そこで今回は、ハイドロカルチャーだと植物がかわいそうと言われる理由とその解決策をご紹介します。
ハイドロカルチャーがかわいそうな理由①十分な日光を確保しにくい
見た目がおしゃれで清潔なハイドロカルチャーは、直射日光を避けた室内の明るい場所に置くのが基本です。
直射日光を当てると水温が上昇し、根が傷んでしまう恐れがあるからです。
つまり、ハイドロカルチャーで植物を栽培する場合は十分な日光と風通しを確保することができず、一年中室内に置きっぱなしということ。
十分な日光と風を確保しにくいということは、光合成で生成できる養分の量も少ないということです。
もちろん土での栽培に比べるとなかなか株が充実しません…。
解決策
斑入りタイプは強光を苦手とするためハイドロカルチャーとの相性◎
「直射日光を避ける」「温度の安定した室内に置く」「水を溜めて管理」
上記のようなハイドロカルチャーでの管理条件に合う植物の特徴としては、「半日陰を好む(耐陰性が強い)」「比較的水を好む性質を持つ」などがあげられます。
そして、これらの条件に合う植物が「ハイドロカルチャーとの相性がよい」といえるでしょう。
特に耐陰性が強いのがポトス、スパティフィラムなどのサトイモ科の観葉植物。
そして、これらサトイモ科の観葉植物は比較的水を好む性質を持ちます。
特に、白い模様の入った斑入り種は直射日光により葉焼けを起こしやすいです。
「サトイモ科×斑入り種の観葉植物はハイドロカルチャーで失敗しにくい」
ハイドロカルチャーと相性のよい観葉植物
▲カラーサンドはハイドロカルチャーの中でも管理が難しい…(水位が見えないため)
- ポトス(斑入り種が特におすすめ)
- マドカズラ
- スパティフィラム
- アンスリウム
- シンゴニウム
- フィロデンドロン、etc…
ハイドロカルチャーがかわいそうな理由②半年~1年に1回、内部の洗浄・交換が必要
容器に穴が空いていないためどうしても内部に汚れが蓄積する
ハイドロカルチャーで観葉植物を育てる場合、基本は底に穴の開いていない容器を使います。
通常の鉢であれば汚れが底穴から水と共に流れ出てくれるね。でも鉢穴がないと容器内に汚れが蓄積し続けるよ。
さらに通常の鉢底穴のある鉢に比べて通気性も劣ります。
つまり、ハイドロカルチャーは根腐れを起こすリスクが高い栽培方法ともいえます。
根腐れを防ぐために必要となるのが、約半年~1年に1回の植え替え(内部の洗浄・交換)です。
しかし、鉢から株を取り出すことは植物にとって大きなストレスになることは間違いありません。
ハイドロカルチャーで育てていると、植物にストレスを与える機会が多くなります。
なかなか大きく生長できない上にストレスを与えがちな栽培環境…。植物の立場になると確かにかわいそう…。
解決策
ハイドロカルチャーの容器底に「根腐れ防止剤」を敷くことで、植え替えの頻度を最小限に抑えることができます。
容器内の不純物を吸着し水を清潔に保つことで、根腐れを防いでくれるのが「ミリオンA」「ゼオライト」などの資材です。
すでにハイドロカルチャーを育てている方は、容器の底に根腐れ防止剤が入っているかを確認してみましょう。
容器底に見える灰色~水色の資材が根腐れ防止剤
もし、「容器の底に根腐れ防止剤らしきものが入っていない」という場合、ハイドロカルチャー用土のみで植えられている可能性があります。
その場合は「イオン交換樹脂栄養剤」を使うのが手軽でおすすめ!
イオン交換樹脂栄養剤は、栄養剤と根腐れ防止剤の2役を担ってくれるとても便利な資材で、上から撒いて水で落とし込むだけで効果を発揮してくれます。
効果は約3か月。直径4.5cmほどの容器に約1/3袋を撒いて水で落とし込みます。
根腐れ防止剤なしで実験してみました
「根腐れ防止剤は本当に効果があるのか?」を個人的に実験してみたのでご紹介しましょう。
下写真はハイドロコーンのみで植えたフィロデンドロンです。
見た目もきれいで土を使っていないため、食卓テーブルにも躊躇なく置けるのがハイドロカルチャーの嬉しいポイントですね。
そんなフィロデンドロンをハイドロカルチャーにして約半年。徐々に根腐れの症状が出始めました。
容器から取り出してみると…。
黒っぽく傷んでしまった根が目立ちます。これは根腐れの症状といえるでしょう。
そして、同じ時期にハイドロカルチャーに植え替えた植物はというと…。
根腐れの症状はみられません
こんな感じ。絶好調というわけでもありませんが、少なくとも根腐れの症状はみられません。
この実験から、やはりハイドロカルチャーを長持ちさせるためには根腐れ防止剤が欠かせないのでは?と感じました。
とはいえ、根腐れ防止剤自体にも汚れが蓄積していきます。交換の目安は約一年。
根腐れ防止剤未使用なら約半年に1回の内部の洗浄・交換を検討。根腐れ防止剤使用のなら約1年スパンで内部の洗浄・交換を検討してみて。
ハイドロカルチャーがかわいそうな理由③酸素不足による根腐れリスク
ハイドロカルチャーでは底穴の開いていない容器を使うことが多く、どうしても根腐れのリスクが高まります。
特に、水が溜まりすぎた状態で放置されると根が窒息し、健康を損ねる原因になります。
解決策
- 水を足すのは容器内の水位が完全に底を付いてから
- 足す水の量は容器の1/5~1/4ほどにする
酸素不足を防ぐためには、水位管理がポイントです。
容器に水を張る際、植物の根が直接水に浸らないようにして、ハイドロボールを湿らせる程度の水量を保つのが理想です。
容器に穴を開けるか、通気性の良い素材の容器を使うことで、酸素供給を改善することもできます。
ハイドロカルチャーがかわいそうな理由④根の成長が制限される
ハイドロカルチャーでは土での栽培と異なり、根が広がれる空間が限られるため、成長が阻害されることがあります。
また、根が窮屈になると植物全体の健康にも悪影響が顕著に出やすいです。
解決策
- 半年~一年に一度、ひとまわり大きめの容器に植え替える
- 根が増えていない場合はこれまでと同じサイズの容器を使っても良い
ハイドロカルチャーでは根が広がるスペースが限られるため、根が詰まってきたと感じたら、ひと回り大きい容器に植え替えることを検討しましょう。
大きな容器に植え替えることで根の成長をサポートし、植物が伸び伸びと育つことができます。
ハイドロカルチャーはかわいそうとも言い切れない!
ここで一例。下写真は、筆者がベランダに置いていたシンゴニウムです。
半日陰に置いていましたが、暑さと水切れ、葉焼けにより傷んでしまいました。
ハイドロカルチャーに切り替えて復活した
「これはいかん」と思い、ハイドロカルチャーに植え替え室内管理に変更。
すると、環境が合っていたらしく元気な姿を取り戻しました。
こんな感じで、株の状態や環境、時期などによっては、ハイドロカルチャーが適しているというケースもあります。
あくまで一例ではありますが、「ハイドロカルチャー=かわいそう」とも言い切れないのでは?と感じた事例でした。
ハイドロカルチャーがかわいそうなら人工観葉もアリ
そうはいっても植物に負担を与えるのはにかわいそう…室内で清潔に観葉植物を楽しむ方法は他にないのかな?
そんな方におすすめなのが「人工観葉」という選択肢です。
人工観葉なら水も土も不要。害虫が湧くこともないから虫が苦手な人でも安心してグリーンを楽しめます。
人工観葉(フェイクグリーン)のメリット
- 水も土も使わないから虫が湧く心配が要らない
- 窓の無い玄関やトイレ、北向きの室内でも枯れない
- 樹形が崩れたり葉が落ちたりすることがない
- 面倒な植え替えや水遣り、難しい剪定の必要がない
本物みたいにリアルなフェイクグリーンが欲しいなら造花専門店で探すのがおすすめ。
手作りで仕上げられていることが多いため、どれも本物みたいに自然でリアルです。
人工観葉(フェイクグリーン)のデメリット
- 低品質なものだと安っぽさを与えてしまう
- 生長の過程が楽しめない
- 水遣りや植え替え、剪定などの世話が好きな人にとっては物足りない
目線から近い位置に飾るならできるだけリアルなものを選ぶこと。これが安っぽく見せないポイントです。
ハイドロカルチャーはかわいそう?デメリットの解決策【まとめ】
デメリットを理解した上で日々の管理を楽しもう!
今回は、ハイドロカルチャーはかわいそうと言われがちな理由と、その解決策を合わせてご紹介しました。
ハイドロカルチャーで観葉植物を育てるのはかわいそうですが、工夫次第で長く楽しむこともできます。
また、ハイドロカルチャーに向いている植物をチョイスすることが失敗を防ぐコツでしょう。
ハイドロカルチャーがかわいそうな理由とその解決策
- 十分な日光を確保しにくい⇒そもそも沢山の日光を必要とする植物をハイドロカルチャーにするのは避ける。半日陰を好む植物をチョイスすることで失敗を防ぐ
- 半年から1年に1回の洗浄・交換が必要⇒根腐れ防止剤やイオン交換樹脂栄養剤などを活用し、できるだけ洗浄の回数を減らすことで株への負担を最小限に抑える